福田首相の「小泉」越え
28日の夜、平成20年度予算がようやく成立しました。補正予算の時と同じく、参議院での否決を経て、形式的な両院協議会を開催し、憲法の規定に則して衆議院の議決を承認しました。衆参ねじれ国会では、憲法上の衆議院の優越と3分の2条項が、いかに大切かを実感します。もし、その規定がなかったら、政治が前に進まない。しかし予算、つまり支出の内容は決まったものの、肝心の収入の中味を決める税制法案の行方は不透明です。平成21年度から道路特定財源を廃止し、一般財源化しようという福田首相のぎりぎりの決断は、小沢党首から一蹴されてしまいました。
首相提案の前日の26日、私が事務局長を務める改革加速議連の総会で、道路財源の問題を議論しました。政治の停滞を憂う若手議員の活発な議論が続きましたが、棚橋泰文会長から議連としての決議案が示されました。
「平成21年度から道路特定財源制度を廃止し、一般財源とする」「道路中期計画については、期間を10年から5年とする」などの内容。事前の根回しなしの、唐突な提案だったため、賛成論もありましたが、強硬な反対論もあり、議連として意見をまとめることは断念しました。しかし一部の有志が、翌日、福田首相に提言を伝えました。福田首相は「ストライクゾーンのど真ん中。ありがとう」と上機嫌だったそうです。
その1時間半後の記者会見で発表された福田首相の新方針は「道路特定財源制度は今年の税制抜本改正時に廃止し、21年度から一般財源化」「道路の中期計画は5年として新たに策定」「道路関連予算の徹底的な無駄の排除」など。改革加速議連有志の建議と重なり、正にストライク。小泉政権でも安倍政権でも実現しなかった道路特定財源制度の大改革が、一国の首相から発表された瞬間でした。
自民党にとっての道路特定財源制度は、ある意味で党のDNAそのもの。だから小泉政権でも、指一本触れることができませんでした。福田提案には、党内から早くも冷ややかな反応が出ています。しかし首相の大方針転換を可能にしたのは、皮肉にも衆参ねじれによる、絶望的な国会の停滞です。小沢民主党には、内閣と話し合いながら、国政の責任を共有しようとする意思が全くありません。ひたすら政局至上主義に走り、政権を攻撃し、日本の国益や国民の生活など無視して、自らの権力奪取に走る。その思惑がありありです。
2月末に衆議院を通過した予算と税制法案ですが、自然成立が約束されている予算は参議院でも議論してきたものの、税制法案は3月に入って4週間、全く審議をしていません。こんな体たらくは、かつてなかったと思います。参議院は完全に死んでいます。すべては小沢党首の政治手法によるものです。完全な膠着状態をいかに打開するか、福田首相は悩んできたと思います。その苦悩が、清水の舞台から飛び降りる思いで、道路財源の一般財源化の大胆提案を呼びました。
政治感度が鋭い若手議員にはわかっても、自民党的DNAからは絶対に出てこない一般財源化の提言について、さすがに民主党の前原・元代表は「革命的な提案だ」と賞賛していますが、政局優先で目が曇っている小沢代表には、その感度がない。「暫定税率はそのままじゃないか」などと、ピンボケなことを言っている。「暫定税率」が木だとすると、「一般財源化」は森。小沢氏は木と森を同列視し、木を見て森が見えていない。半年前なら、この提案に飛びついて、大連立に発展したかも知れない。それ位、重要な福田ドクトリンです。
福田首相は、ど真ん中にストライクを投げた。小沢氏は、ストライクと見ていない。しかし民主党内には、これはストライクだと思っている議員も多いはず。民主党の松井孝治参議院議員は自らのメルマガで「福田首相の昨日の提案は評価できる内容だ。自民党内に引き続き強力な抵抗勢力を抱えつつ提案を行ったことを過小評価すべきではない。改革の本丸は道路特定財源の一般財源化と考える。いまの財政状況と、特に医療・社会福祉の崩壊の実情を考えた時に、暫定税率の撤廃もさることながら、巨額の道路特定財源を一般財源化することの優先度が高い」と、正鵠を射た意見を開陳しています。改革を前進させるには、野党がストライクを認め、衆参ねじれを奇貨として、自民党内の抵抗を抑える力学が必要です。
小沢代表、山岡国対委員長の強硬路線に辟易している議員も、民主党内には増えてきました。小沢代表の頭には、強硬路線を続けることで、小沢神話を維持し、求心力を高めることしかありません。50点でもいいから、改革を進めようという意識が全くない。自民党と民主党の戦いは、チキンレース。自民党側は持久戦の構えです。解散はしない。この国会をなんとか乗り切り、夏のサミットをこなす。衆議院の解散がなければ、政局一本やりの小沢路線は、秋の民主党代表選挙まで持たないでしょう。小沢代表に対する民主党内の支持に陰りが出ることは間違いない。
政局は激動の4月へと突入します。ガソリンの値段が下がり、4月30日に3分の2条項を適用して、税制法案を成立させる。首相への問責決議が可決されるも、それを無視して国会を続行。混乱のまま閉幕、そしてサミットへ。日本の政治は不毛な未体験ゾーンへと、なだれ込んでいきます。
[ 2008年03月28日 ]
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