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GAKU論

「社会保障を考える会」

 このたび、仲間の議員とともに「社会保障を考える会」という勉強会を立ち上げることになりました。あす(23日)、舛添厚生労働大臣を招いて、第一回の会議を開きます。私は自民党の厚生労働部会長を丸一年務めてみて、つくづく今の厚生労働行政が財務省の影響下にあり、財政の論理で進められていることを痛感してきました。日本の社会保障がどうあるべきか、という本質論よりも、まず予算の枠ありき、歳出の削減ありきの政策決定が続き、忸怩たる思いで部会長の仕事を続けてきました。来年度の厚生労働予算を2200億円圧縮する方針も、まさにその典型で、はじめに枠ありき、それに合わせて制度を無理やり、修正する方式を毎年繰り返しています。
 もちろん、世界一のスピードで進む日本の高齢化の中で、持続可能な社会保障制度を構築するためには、財政面で厳しい姿勢を堅持しなければ、制度自体が維持できなくなるのは当たり前です。それでもここ何年か続いた削減路線は限界にきたのではないか、との思いが強くなってきました。そこで「社会保障を考える会」で社会保障のあり方を根っこから議論することになりました。 
 時を同じくして、政府の経済財政諮問会議でも福田首相の指示で、社会保障と税の議論を開始。党の財政改革研究会でも、同様の議論が始まりました。17日の経済財政諮問会議は、首相交代を象徴するように、これまでの「増税なき財政再建」路線から「増税も視野に入れた現実的な」路線へと大きく舵をきった印象です。
 内閣府から提出された中期見通しでは「2011年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化のためには、名目成長率3.0%で14.3兆円の歳出削減を断行することが必要で、名目成長率が2.2%にとどまり、年間1兆円の支出増が続けば、6.6兆円、消費税換算で2.5%の増税が必要」とのシビアな試案が提示されました。福田首相も「非常に厳しい選択をしていかなくてはならないことが示された」と語り、消費税議論は避けられないとの認識を示しました。また党の財政改革研究会の会長に就任した与謝野馨・前官房長官も「消費税の議論を正面からせざるえをえない」「(社会保障の)財政的裏づけをきちんとしておかなければ、借金財政でやっていけば壁にぶつかる」と歩調を合わせています。
 これまでの小泉・安倍政権下では、竹中平蔵・元経済財政担当大臣や中川秀直・元幹事長らが主導して、経済成長率を上げることで税収を増やし、財政を再建する「上げ潮路線」が主流でしたが、政権交代を期に、一気に流れが変化しつつあります。これにカチンときた中川氏は、先日の清和政策研究会の議員総会で「福田首相は改革と成長の路線を堅持すると言っている。増税は福田内閣退陣と自民党下野を前提にした議論だ。選挙に負けることを前提にした政策作りなどありえない」と反論。私もすぐ近くに座っていましたが、ものすごい剣幕でした。
 ところが同日の記者会見で町村官房長官は「耳障りがいい政策だけ並べて選挙に勝つことが正しいスタンスか。それは違う」と牽制。町村氏は午前の会見でも「明らかに負担と給付の水準はアンバランスだ。借金をどんどんして次世代に全部つけを回せばいいというのは無責任だ」と、立場を鮮明にしています。中川氏と町村氏、私が所属する同じ清和政策研究会の代表世話人同士で、先の中川発言の時も、町村氏は横にいて黙って聞いていました。与謝野氏は上げ潮路線を「悪魔的手法」とさえ評しています。党内は経済・財政路線をめぐって、ミニ政局の様相です。
 これに竹中氏が「改革スタンスの揺らぎが見られる」と批判して、参戦しました。(22日・産経新聞)
 『経済の深い議論がないままに、財政政策に関して「成長派」か「財政再建派」かという対立概念が定着しつつある』『正しくは、「成長再建」か「増税再建」かというべき』『改革を進め、成長促進を実現して財政再建するのが「成長再建派」である。これに対し、改革に消極的で結果的に成長も高まらない、だから増税に頼るというのが「増税再建派」である。したがって結果的には「改革積極派」か「改革消極派」か、という言い方もあてはまる』
 改革の本家気取りが、いささか食傷気味ですが、改革とは「上げ潮」路線だけなのか、というのが私の疑問です。もちろん、私は危機的な財政は健全化しなければならないと実感していますし、そのために歳出の無駄は徹底的に排除し、絞るものは容赦なしに絞っていくことは当然、必要です。経済の成長戦略をとり続けなければ、日本という国が潰れてしまいます。不合理な歳出を温存したまま、消費税の増税に頼るのは、絶対に避けなければなりません。その上で、社会保障に配分される資源が、今のままでいいのか。同様の歳出削減路線で、例えば私の地元の北海道の建設業は大変、疲弊していますが、公共事業予算のある程度の削減は、財政全体を考えたら避けられないと思います。
 しかし、社会保障部門は最早、限界ではないのか。連続する歳出減と負担増路線が、制度そのものを歪めています。過疎地だけでなく、ある程度の人口を擁する市町村でさえ、地域医療を維持できなくなっています。介護の現場では、報酬が安いためにヘルパーのなり手がいません。社会保障予算を総枠で押さえつけるのではなく、国民が求める水準とはなにか、次世代に付回ししない持続可能な制度とは何か。ある程度の歳出規模を前提に、安心できる社会保障を構築することが、改革に逆行することとは思えません。この「社会保障を考える会」でしっかりと議論し、方向性を見出していきたいと思います。
 しかし現状は、社保庁や防衛省の不祥事が象徴するように、政治や行政への国民の信頼が著しく失われ、給付と負担や財源をめぐる骨太の議論が、なかなか前に進まないのも事実です。衆参ねじれ国会では、厚生労働省の不祥事の追及が中心で、社会保障の議論がなく、また前事務次官の証人喚問が優先で、国際貢献の議論はない、まさに国家の進路をめぐる本質の議論が全くなされず、国権の最高機関が、ワイドショーのスタジオと化しています。ささやかでもいい、将来のためにまっとうな議論がしたいと願っています。

[ 2007年10月22日 ]


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