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GAKU論

安倍首相辞任、危急存亡の秋

 政治の世界に入って11年。これまでも色々と修羅場を経験してきましたが、「驚天動地」という意味では、きょうの安倍首相の突然の辞意表明は、本当に驚かされました。安倍首相は、あれだけの参院選大敗でも続投を決断し、内閣を改造し、APECに出席し、二日前には今後の政権運営の方針を所信表明の形で、国会で語っています。ここまでやってきて、さあ代表質問という段階での辞意。小沢党首が言うように、正に前例のない対応です。 
 きょうの記者会見で、安倍首相は辞任の理由について、テロ特措法の延長問題で、小沢党首との党首会談の申し出を断られたことを一番に挙げています。これには自民党議員からも疑問の声が聞かれました。テロ特措法が大事であれば、その理由を首相として国民に丁寧に説明し、新法の提案や衆議院での再議決など、あらゆる手段を使って延長の実現に努力することが、首相の務めでしょう。安倍首相自身が、オーストラリアでの記者会見で、あらゆる努力をすると宣言したばかりです。私はやはり、辞任の理由は、健康面、体力面、なにより気力が続かなくなったことがあると思います。
 今年に入ってからの安倍首相をめぐる政治状況は、年金記録問題、数々の大臣の問題発言、政治とカネの不祥事など、安倍首相発の問題ではなく、周囲や歴代の政権の後遺症ともいえる問題の後処理に追われ続けてきたと言えます。そうした一連の問題に対する、首相としてのリーダーシップが問われてきました。さらには「憲法改正」とか「戦後レジームからの脱却」という、左系メディアが歓迎しないテーマを掲げた安倍首相に対して、徹底的に叩くメディアの存在が、首相を苦しめ続けたと言えるでしょう。政権とメディアの関係は不思議で、政権の力が強いとメディアは反抗しませんが、政権のモメンタムが下がると、途端にメディアが牙をむく現象が起きるのは、森政権の時と同様です。日本のメディアは、保守バリバリの政権を許容したくない、という戦後レジームそのものであると思います。
 安倍首相が重要視するテロ特措法についても、主要メディアの論調は延長に否定的で、その実態や意義について、正確かつ詳細に報道しようとはしてきませんでした。国民の世論調査も、テロ特措法の延長には批判的な結果が出ています。インド洋でのテロ勢力阻止作戦は、通行船舶に対する点検、監視であり、武力行使とは関係がありません。日本は各国が共同で実施している、洋上作戦に「給油・給水」という形で、謙虚に参加しています。各国と同じ内容で参加しても問題ないと思いますが、それでも日本は、憲法との関係に配慮し、後方支援的な「給油・給水」活動に限定して参加しています。
 小沢党首が指摘するように、このインド洋での各国の共同作戦を直接、担保した国連の決議はありませんが、武力行使との関連が全くない、このような日本の国際貢献まで、すべて細かく国連決議に拠らなければ、日本は何もできないのでしょうか。このオペレーションが、小沢氏の言う、集団的自衛権なのだろうか。全く信じられない論理です。安倍首相はAPECやサミットなどで示される国際社会からの期待と、小沢氏から示される国内政局的全否定の論理のはざ間で、苦悩していたと推察します。
 先の参院選で国民は小沢理論を支持した。しかし世界の共通価値観は、小沢的ローカル権力至上主義とは全く異質、異次元のところにあるはず。小沢さんだって、むかしは全く違うことを言っていたのに、政権を奪取するためには、世界の非常識たる、国内ポピュリズムにおもねるしかなかったのでしょうか。権力を獲るためには、なんでもやる。これは平成5年政局でも見せた小沢流であり、このことは改めて触れたいと思いますが、そのことが、その後、日本の政治を10年以上にわたって、ゆがめたことを忘れてはいけない。安倍首相は、その小沢氏と徹底的に戦うだけの、体力がなかったのだと、残念でなりません。
 私個人としては、テロ特措法は新法を作り、参議院で否決されても、衆議院での3分の2規定を利用する再議決で成立を図る。参議院で首相問責決議が可決され、安倍首相が責任をとって辞職というシナリオしかないと思っていましたが、安倍氏の突然の辞職で、このシナリオは根底から崩れました。新しい首相が誕生しても、民主党の姿勢は変わりません。安倍首相の辞職は、ほとんど捨て石にならないのです。むしろ後継者の仕事を、やりづらくするだけです。
 きょうの改革加速議員連盟の緊急総会でも、党の現状への危機感が多くの若手議員から出されました。新しい総裁を選ぶ総裁選についても、開かれた党員参加のものでなければ、自民党の未来はないとの声が大勢でした。国会中ということもあり、総裁選を短期間のコンパクトなものにしたいとの執行部の意図も見えています。しかし新たに選ばれる新総裁、すなわち新首相が、国民に支持される存在でなければ、自民党は崩壊過程に入るだけでしょう。安倍首相の辞任は、自民党を存亡の危機に追い込む、重大すぎる決断だと感じています。

[ 2007年09月12日 ]


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