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GAKU論

奇妙な判決

 これは労働組合が書いた判決文ではないかと、わが目を疑いました。21日東京地裁の国旗国歌訴訟の判決です。都立高校などの教職員が都と都教委を相手取り、入学・卒業式で国旗掲揚と国歌斉唱に従う義務がないことの確認などを求めた訴訟で東京地裁は「国歌斉唱などを強制するのは思想・良心の自由を保障した憲法に反する」として、教職員側全面勝訴の判決を言い渡しました。
 判決に曰く。「日の丸、君が代は皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあるのは否定し難い歴史的事実で、現在も国民の間で価値中立的なものと認められるまでには至っていない」。裁判長は日本の国旗・国歌が国民の間で「価値中立的なもの」ではないとの認識ですが、本当にそうだろうか。オリンピックやワールドカップでは、日本人が日本の選手を応援するのに日の丸を掲げます。日本ハムの試合では、試合開始前に観客みんなで起立して国歌を斉唱します。世論調査でも、多くの国民が日の丸・君が代を認め、国会は国旗国歌法を制定しました。日の丸・君が代は一時期の軍国主義思想で染め上げられるようなものではなく、もっと長い伝統に育まれて日本の社会に定着した存在です。だから「価値中立的」などというものではなく、しっかりと、その「価値」が日本国民に根ざしたものです。そこの基本認識が、この裁判官は全く違う。前提となる論理が、今回の原告側と同じ思想傾向ですから、判決も同じ思想になってしまう。そもそも日の丸・君が代に対案はありません。簡単にすげ替えられるようなものではない。戦争直後だって、国旗国歌を新しくしようなどという国民的な機運は起きませんでした。
 さらに判決に曰く。「原告ら教職員は国旗国歌法や通達で、国歌を斉唱するまでの義務はなく、思想・良心の自由に基づき、これらの行為を拒否する自由を有している」「原告らが拒否しても、国歌斉唱の拒否をことさらあおる恐れがあるとまではいえず」「国旗、国歌に対する正しい認識を持たせ、これを尊重する態度を育てるとの教育目標を阻害する恐れもない」。おいおい、そんなにはっきりと断定するのかい。なぜこれまで教育関係者が、この国旗国歌問題で苦労してきたのか、この裁判長はわかっているのだろうか。いやな人は国旗を掲げなくていいし、国歌も歌わなくていいよ、となったら教育現場で国旗国歌の指導が適正に行われるだろうか。そもそも国旗国歌法が制定されたのは、この問題をめぐって広島県の校長が自殺した事件が発端でした。教育の場で国旗国歌の指導がしっかり行われてこなかったことが問題だったのです。その反省から法を作り、学習指導要領に明記して、教育現場での指導の徹底を進めてきたわけです。それを全否定したら、すべてが振り出しに戻ってしまいます。
 判決に曰く。「生徒に日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てるとともに、国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ、それらを尊重する態度を育てるのは重要なことだ」。なんだ、わかっているじゃないか。しかし教職員組合の言い分を聞いていたら、そういうことができなかったのが、これまでの教育の歴史ではないですか。思想・良心の自由は勿論、あります。しかし教育の目標を推進する上で、学習指導要領や通達、指導など、ある程度の決まりごとがなければ、好き勝手な教育がまかり通ることになります。その決まりに従うというルールがなければ、社会は壊れてしまう。この裁判長は法律には詳しいかもしれないが、日本人としての大事な常識に欠けている。その常識を持っていなければ、しっかりした判決を下すことができないことを、今回の判決は如実に示しました。上級審で適切な判断が下されることを期待します。

[ 2006年09月23日 ]


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