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GAKU論

ニュースソースの秘匿

 国会では予算や法案の審議が粛々と進んでいますが、世間の関心は相変わらず「永田メール」問題にあるようです。きょうも衆議院懲罰委員会が開かれ、永田議員に対する質疑が行われていますが、焦点は情報提供者の氏名公表だと報道されています。永田氏はかねがね情報ルートは秘匿することが原則だと言っていたのに、きょうの委員会ではあっさりと情報提供者の氏名を明らかにしました。悪いのは情報提供者だとする責任転嫁の匂いがしますが、もっとも、この偽メール情報の提供者は週刊誌などでは、とっくに素性が明らかにされています。さらには永田氏が予算委員会で、このメールを取り上げたその日に、メールのネタ元が政府中枢に確認されており、小泉首相が言下に「ガセネタ」と断定できる程度の要注意人物だったことは周知の事実です。
 かつてメディアの世界にいた私にとって、取材源を秘匿することは鉄則中の鉄則でしたが、国会においても情報源を秘匿することは、大原則ではないのかと思います。まだかけだしの放送記者の頃、北海道新聞の記者がニュースソースの公表を拒否した裁判を取材したことがあります。当時、大きな話題になりましたが、国民の知る権利に応えるため、取材源の秘匿は正当とする司法判断は、この裁判で確立されたもので、その後、この判断は法律の世界でも、メディアの世界でも揺るぎない大原則となりました。
 ところが最近、米国企業の日本法人が所得隠しをしたとする報道をめぐって、取材記者が民事裁判の尋問で取材源に関する証言を拒否したことについて、東京地裁と東京高裁が正反対の決定を下しました。3月14日の地裁決定は「記者に情報を提供する行為が、公務員の守秘義務違反などに問われる可能性がある場合などは、記者の証言拒絶権は認められない」「裁判所が証言拒否を認めることは、犯罪行為の隠蔽に加担するに等しい」として読売新聞記者の証言拒否を認めない判断を下しました。
 一方、わずか3日後の3月17日、東京高裁は「真に報道目的で手段・方法が社会通念上、是認される限りは、正当な業務行為に当たる」「取材活動の自由のために取材源秘匿が必要」と述べ、過去の判例を踏まえ、NHK記者の証言拒否を認める正反対の判断を示しています。
 メディアの世界での取材源の秘匿は、すでに確立された当然の考えで、国民の知る権利、報道の自由の大前提です。ですから東京地裁の判断は全く不可解と言わざるを得ません。おそらく上級審で適切な判断が下るものと思いますが、地裁の判断のようなメディア規制の考えが、最近あちこちで散見されるのが気懸かりです。
 さて永田メール事件では、永田議員がネタ元をあっさり明らかにしたため、偽メールを仲介した「西沢某」の証人喚問が行われることになりました。国会議員の場合、国会での発言は院外で責任を問われないという免責特権があります。先ほどの取材源の秘匿が報道の自由を守るのと同様、発言の自由を確保することが民主主義の根幹であるから、議員の発言は免責されるのです。しかしだからといって、何を発言してもいいということにはならない。免責特権があることは、発言について議員個人に高度の倫理性が求められるのは言うまでもありません。その意識が永田氏には決定的に欠けていました。
 4月4日に、「西沢某」の証人喚問が行われます。今回の偽メール事件の背後に潜む、恐るべき謀略が明らかになるかも知れません。私は政治の世界においても、あまり情報源を詳らかにすべきではないと考えますが、今回の偽メール事件では、偽メールを持ち込んだ仲介者の真のねらいを明らかにすることが大事であり、真相の究明が、国会の大きな役割だと思っています。

[ 2006年03月24日 ]


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